リニューアルで「完璧なサイト」を目指すな 成果を出す企業が実践する“育てるEC”の考え方

リニューアルで「完璧なサイト」を目指すな 成果を出す企業が実践する“育てるEC”の考え方
今村 紅

この記事の著者・監修者

今村 紅(こころんらぼ代表)

ECサイト構築・運用支援を専門とする「こころんらぼ」代表。
Shopifyを活用したオンラインストアの新規立ち上げからリニューアル、公開後の運営サポートやマーケティング施策まで幅広く対応。
特に「成果を上げる導線設計」「ブランドの世界観を伝えるデザイン」「継続的に成果を伸ばす運用体制づくり」に強みを持つ。
食品・アパレル・雑貨・BtoB事業など、多様な業種のプロジェクトを手がけ、事業の成長を支援している。


はじめに

ECサイトをリニューアルするとき、
「今度こそ完璧なサイトにしたい」
「これで数年は安心できるように作り切りたい」
そう考える企業は少なくありません。

しかし、実際の現場では “完璧を目指すリニューアルほど成果が出にくい” というケースが非常に多く見られます。

なぜなら、リニューアルの段階では「正解」がまだ見えていないからです。
どれだけ時間をかけても、ユーザーの反応や売上への影響は公開してみないと分からない

本記事では、こころんらぼがこれまで多くのECサイトを支援する中で見えてきた、
「完璧を目指さないリニューアル」がなぜ成果につながるのか、
そして“育てるEC”という考え方について解説します。


「完璧なサイトを作る」という幻想

リニューアル前の打ち合わせでは、
「ここも改善したい」「この機能も入れたい」「デザインも最新に」
と要望がどんどん増えていきます。

結果として、制作スケジュールが延び、
リリースのタイミングを逃してしまうことも少なくありません。

しかし実際には、リニューアルの段階で作るものはすべて“仮説”です。
どのデザインが響くか、どんな導線が最適か、どんな機能が必要かは、
ユーザーが実際に使ってみて初めて見えてきます。

どれだけ議論を重ねても、机上の理想に近づくだけ。
それよりも大切なのは、まずリリースして、実際の数値で確かめることです。

「完璧を目指すほど、リリースが遠のく」
「スピードと検証こそが、成果への近道」


成功している企業ほど「公開後に育てている」

私たちが支援している企業の中で、成果を出しているところに共通しているのは、
“リニューアル後の運用”に重きを置いていることです。

サイトを公開して終わりではなく、
公開後のデータを見ながら改善を繰り返しています。

特に重視しているのが「CV(コンバージョン)」です。

  • どのページで購入が多いか

  • どの導線で離脱が発生しているか

  • CVR(購入率)がどのくらいか

これらの数値を見ながら、ページの構成や導線、訴求内容を調整していきます。

リニューアル段階で“完璧”を作るのではなく、
「65点で出して、80点に育てる」 のが理想です。

「完璧な初期構築」より、「運用しながら伸ばせる構築」。
これが成果を出す企業の共通点です。


機能を最初から盛り込みすぎない

リニューアル時に多いのが、「あれもこれも入れたい」という要望です。
レビュー機能、クーポン発行、定期購入、ポイント連携…。

もちろん、これらは重要な機能ですが、
最初からすべてを盛り込むのはおすすめしません。

なぜなら、運用してみないと「どの機能が本当に必要か」が分からないからです。

例えば、

  • レビュー機能をつけたが、レビューを集める体制が整っていない

  • クーポンを配信しても、顧客がLINE登録していない

  • 定期購入の需要が想定より低い

このように、運用前に想定した理想と現実の間にはギャップが生まれるものです。

ですから、最初は“必要最小限の導線”で構築し、
実際の運用データや顧客の反応を見ながら、
本当に必要な機能を追加していくのが理想的です。

サイトは“完成品”ではなく、“成長するプロジェクト”。


見るべきは「見た目」ではなく「数字」

リニューアルで意外と多いのが、
「見た目がよくなった=改善できた」と思い込んでしまうケースです。

しかし、デザインが美しくても、

  • CV(購入)が増えていない

  • 離脱が減っていない

  • 滞在時間が変わらない

なら、それは成果の出ないリニューアルです。

見た目よりも大切なのは、「数字がどう変化したか」。
特にCV(購入数・問い合わせ数・予約数など)を軸に見ていくことが重要です。

  • ページを変えてCVが上がった → 改善成功

  • デザインを変えてCVが下がった → 再検証が必要

このように、数字を基準に判断していけば、
“感覚”ではなく“根拠”を持ってサイトを育てていけます。

きれいより、売れる。
感覚ではなく、数字で見る。


リニューアルは「スタートライン」にすぎない

多くの企業は「リニューアル=ゴール」と捉えがちですが、
本当の勝負は公開してから始まります。

リニューアルの目的は「完成」ではなく、「成長の土台を作ること」。
運用を通して初めて、改善すべきポイントや新たな施策が見えてきます。

  • 新しい商品カテゴリを作りたい

  • 集客チャネルを広げたい

  • リピーターを増やしたい

こうした次の一手は、運用の中でしか見えてきません。

だからこそ、
“運用で育てる前提”のリニューアル設計が大切です。
データを見ながら、チームで改善を続けられる仕組みを持つこと。
こころんらぼでは、その伴走を得意としています。

リニューアルは、終わりではなく始まり。
企業とともに“育てていく”のが本当の支援。


「育てる」過程を楽しむ

ECサイトの運用は、数字を見て、仮説を立て、また改善していく地道な作業です。
しかし、それを**「苦労」ではなく「育てる楽しみ」**として捉えられる企業ほど、長く成果を出しています。

新しいバナーを試して反応が上がったり、
商品ページを少し変えただけでCVが伸びたり。
そうした小さな発見と成果が積み重なって、サイト全体が育っていく。

リニューアルで大切なのは、
“完璧な状態を作ること”ではなく、
“育てる過程そのものを楽しむ”こと。

ECは“終わりのないプロジェクト”。
数字が伸びていく喜びを、チームで共有できることが最大の価値です。


まとめ

  • リニューアル段階では「正解」はまだ見えていない。

  • 65点で出して、運用で80点・90点に育てていく。

  • 機能を最初から盛り込みすぎず、必要性は運用で見極める。

  • 見た目ではなく「CV」という数字を基準に改善する。

  • リニューアルは“スタートライン”。

  • そして何より、“育てる過程を楽しむ”ことが成果を生み出す近道。


最後に

完璧なリニューアルは存在しません。
存在するのは、数字で育ち、成長し続けるECサイトです。

サイトを“完成させる”ことよりも、
“運用して成果を出す仕組みを整える”こと。
そしてその過程を楽しめるチームこそが、強いECを作ります。

こころんらぼは、企業とともにその成長の過程を楽しみながら、
リニューアルから運用まで伴走していきます。